原発輸出・死の商人

野田首相は来日したベトナムのズン首相との間で原発の建設に協力するとの協定を結んだという。この話には勿論3月11日の原発事故より前からの経緯があるのだろう。でもこの大事故で苦しんでいる国民を尻目に日本政府が何の反省も逡巡もなく原発の輸出に踏み出すのにはまったくの違和感を禁じ得ない。次にはインドやトルコにもという話もあるらしい。

勿論日本の技術を発展途上国に輸出することは相手国を援助し日本の国益に適うことだろう。しかし相手国が如何に評価しようとも日本の原発技術が欠陥だらけの砂上の楼閣であることは身をもって証明したはずである。まさか将来事故が起きても日本でないから構わぬと考えている訳ではあるまい。原発事故の被害は一国にとどまらない。原発の安全や使用済み核燃料処理の問題は早急に解決されなければならない深刻でグローバルな課題である。

原発輸出は道義的にも許されない。利益のために自らの失敗を顧みず危険を承知で売りつけるのは武器輸出にも劣らぬ「死の商人」と言えよう。国際的パートナーシップを築くのは信頼である。本当に信頼をかち得るためには安全な自然エネルギーの活用技術の開発と輸出を目標とするべきではないだろうか。ここで原発輸出を始める事は将来にわたって原発技術の向上開発の継続に口実を与えかねない。

原発事故の収束さえ目途が立たないというのに菅前首相が唱えた脱原発依存はどうやらすでに反古にされたらしい。「なまず」は地震を起すと言うが「どじょう」は一体何を起すのだろうか?脱官僚を放棄したことは彼の国会答弁を見れば明らかである。

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