地に墜ちた宇宙人

昨年8月、鳩山さんは「私の政治哲学」と題する小論文を彼のホームページに載せた。その論文は次の言葉で締め括られている。

今日においては「EUの父」と讃えられるクーデンホフ・カレルギーが、八十五年前に『汎ヨーロッパ』を刊行した時の言葉がある。彼は言った。「すべての偉大な歴史的出来事は、ユートピアとして始まり、現実として終わった」、そして、「一つの考えがユートピアにとどまるか、現実となるかは、それを信じる人間の数と実行力にかかっている」と。

現実はユートピアの実現ははかなく消え僅か7ヶ月で総理辞任となった。

甘い期待は裏切られた。やっぱりただの世襲お金持ちのお坊ちゃんだったのか。「宇宙人」という言葉に新しい政治への期待と夢を托した人は少なくなかっただろうが、真面目で誠実なこの人は現実離れした世間知らずに過ぎなかったようだ。理想主義はかっこよいが政治家は義と策を持たねばならない。普天間問題に象徴されるように問題の解析、方策もないまま限られた情報を頼りに無責任な発言を口にした。その稚拙さが日米関係をおかしくし、沖縄の人々に絶望と不信を植え付けてしまった。「学べば学ぶほど抑止力の必要性を知った」と悪びれる事もなく謝るのだがこれは首相の言うべき言葉ではない。勉強不足を謝ってすむ問題ではないこともこの人は分かってないらしい。宇宙人は他愛もなく地に墜ちてしまった。でも小沢さんに操られて来た鳩山さんは最後に一つだけ良いことをした。「私は辞めますが貴方も幹事長を辞めてください」と小沢さんを辞めさせたことだ。

新しい首相は久々庶民出身の菅さんだがこの人に期待するのは政治とカネの問題、はっきりと言えば隠然たる小沢さんの影響力からの脱却である。その時に民主党は始めて新生したと言えるだろう。「小沢さんにはしばらく静かにしていてもらいたい。それがご本人にとっても民主党にとっても日本にとっても良いことだ」首相指名にあたって菅さんがこう発言したことは注目に値する。「しばらく」というのがちょっと気掛かりではあるが・・