中国vs.日本

 

中国の高速鉄道事故には唖然とした。中国鉄道省は事故車両を壊して穴に埋め乗客の救出もそこそこに現場の検証、事故原因の解明も待たず僅か一日半で運転を再開した。そこには国家の威信の前には人命や安全は二の次であり失態の隠蔽が最重要であるとする体質が露わであった。言うまでも無く中国は共産党一党独裁政権でありこの事件は天安門事件とともにその怖ろしさを実感させるものだった。

ところでこのニュースですぐに思い浮かべたのが日本の原発事故だった。放射能漏れについては枝野官房長官は「ただちに人体に影響を与えるものではない」を繰り返し、東電が原子炉のメルトダウンを認めたのは事故後二ヶ月も経ってからだった。いま5ヶ月近くを経過して曲がりなりにも原子炉の安定冷却に到達したというが今後の見通しについては予断を許さぬ状況が続いている。日々より広範囲での魚介類、農作物、家畜の汚染が明らかになりつつあり直接の被災者のみならず全国的に国民の不安は高まりつつある。

民主国家である日本の政治体制は中国のそれとは大違いと思われるが、政府や官僚の本質を見ると意外な共通点を持つことが分かる。原子力発電について言えばこれは国家的プロジェクトととして進められたがその推進や運営に関しては経済産業省と東電を始めとする全国7つの独占企業である電力会社の利権をバックとする密接な連帯のもとに進められた。

経済産業省の中に原発を推し進める資源エネルギー庁と安全を監督規制すべき原子力安全・保安院が同居していた。別に識者による原子力安全委員会内閣府に存在したがそれはほとんど開かれることもなく機能していなかった。福島原発事故査察のため来日した国際原子力機関IAEAの査察団はいち早くこの体制の不備を指摘したがいまだに改善の動きは見られない。

それどころか最近もっと忌まわしい報道に耳を疑った。かって中部電力九州電力原発建設の地元で行われた国による現地説明会で電力会社や関連企業の関係者を動員して原発建設に例文つきで賛成の意見を述べさせたといういわゆるやらせ事件である。このやらせは安全・保安院が計画演出しメールによる根回しを行ったものだという報道を聞いて背筋が寒くなった。その説明会で会の進行を取り仕切っていた当時の保安院の課長が今は保安院報道官として堂々とテレビで解説をしている。これはまさに中国の隠蔽体質と同じではないか!

脱原発(個人的にだそうだが)を標榜する菅さんにはこの経済産業省改革にすぐにも取り組んで頂きたい。菅さんはこの構図は彼が厚生大臣時代に問題となった厚生省と製薬業界の癒着による薬害エイズ事件と同じだと述べている。


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