プラン B 3.0

はてな? Plan B 3.0、何のプランだろう?

これはパソコンのゲームソフトではない。環境学アメリカのレスター・ブラウンの著書で「エコ・エコノミー」、「プランB 2.0」に続く地球環境保全への立案書である。”人類文明を救うために”という副題がつけられているが、化石エネルギーに依存する今のままの経済に依存するプランAに対しての代替案として提唱された。もしプランAを続けるならば人類文明の存続は限りなく危機に近づいて行くことは疑いない。過去の文明、シュメール文明、マヤ文明がどうして滅亡してしまったのか。それは水の枯渇、塩害など自然破壊の結果であると指摘する。過去の惨事はローカルな文明の滅亡ですんだが現代の自然破壊は人類を含めた地球上の生物の絶滅を意味する。

第I部では迫りつつあるピーク・オイル(原油生産が減少へ向う転換点)とフードセキュリティ、気温上昇、水不足、これらの深刻な問題を現状を踏まえて詳細に解説する。そして第II部では破滅を回避するプランBのさまざまな取り組みを提唱し、第III部では政治経済の観点から環境の一部としての新しい経済、気候変動を回避するエコ・エコノミーの具体案を提唱している。

2020年までに80%の二酸化炭素削減が可能であるとするプランは野心的である。風力、水力、地熱発電などの再生可能エネルギーの利用、省エネ技術開発と共に環境税、炭素税の活用など経済的な取り組みの提唱は説得力がある。今再生可能エネルギーの利用に向って舵を切らなければ人類の未来は無い。勿論その為の費用は必要である。しかしそれはアメリカの年間軍事費(2006)の3分の1、全世界の軍事費の6分の1ですむというのだ。しかもそれは新しい雇用の創出をも意味する。

実に豊富な事例について詳細に記述されている。しかし残念な事にその根拠となる科学的データについては本文中に引用文献についての100に及ぶ引用番号がふられているにも拘わらずこの訳書では引用文献が記載されていない。原著には記載があるのだろうが科学的な事実や論拠を知りたいと思って読む人はがっかりするだろう。簡単に補足できる本訳書の唯一の欠点である。出版が予定されているプランB 4.0ではこれが解決されることを期待する。

前にも書いたが地球温暖化についてはいくつもの反論や憶測が流布されている。二酸化炭素の排出権をめぐって自国の国益に目を奪われ問題の本質を見失っている政治家も少なくない。迫り来るピーク・オイルを目前にして人類文明の危機を未然に回避する人類の叡智が今ほど求められている時は無い。

宇宙飛行士のみが見ることの出来る地球の大気圏の薄さを実感している人は少ない。厚さ僅か1〜2万メートル、饅頭の薄皮のような毀れ易い大気圏に80億の人々が生活しているのである。

プランB3.0 人類文明を救うために

プランB3.0 人類文明を救うために