人とバッタ

はてなセロトニンと言えばヒトの脳内麻薬では?

空を真っ黒に覆って群れ飛び農作物を片っ端から食べ尽くす砂漠のバッタの映像をご覧になった方も多いだろう。サバクトビバッタは低密度下では孤独相と呼ばれる通常の状態を保っているが、高密度になると個体間の接触によって群生相に特有な行進行動を引き起こし、数世代の後には群生相特有の形態に変化する。

英国オクスフォード大学のアンスティーさん達は混みあいによる後脚の接触刺激で群生相のバッタではセロトニンという物質が胸部神経節に増加しておりこれが群生相行動の引き金であることを見つけた。この論文は米科学雑誌サイエンスの1月30日号に掲載された。

Serotonin Mediates Behavioral Gregarization Underlying Swarm Formation in Desert Locusts
Michael L. Anstey et al., Science, 323, 627-630 (2009)

セロトニンと言えばヒトの視床下部アミノ酸であるトリプトファンから作られる脳内物質で快感や満足感、幸福感をもたらす物質として知られている。人もバッタも同じ物質でコントロールされているのか?そう言えば人の群れたがる行動、例えば群集の中にいれば安心していられると言う心理はどこかバッタに似ているようにも思える。

でも驚くには当たらない。サイクリックAMPという小分子は人の細胞内の情報伝達をつかさどるメッセンジャーだが何と原始的な粘菌の集合シグナルでもあるのだ。所詮人間もバッタも単細胞のバクテリアから進化したものであり生命の仕組みはバクテリアから受け継がれて来たのである。

なおこのセロトニンによる群生化の仕組みが解明されたことでバッタの大発生を防ぐ方法が生まれるかもしれない。